クリンソウ(九輪草、学名Primula japonica)は、日本固有種とされており、比較的冷涼な湿地に自生するサクラソウの一種。5月初旬から6月初旬にかけて、下段より順次上へ花をつけ、1本の花軸に数段輪生して花を付ける様子が、仏塔の先端にある「九輪」に似ていることから名前の由来となっています。
兵庫県は、この多紀連山のクリンソウ自生地を、規模においても、質的・全国的価値に優れた植物群落として「湿地植生Aランク」に指定しています。約4,300㎡の場所に17万株が自生していると推測されます。
最近は各地でクリンソウが増える傾向が見られますが、クリンソウはシカ等の野生動物が食べない忌避植物であるため、近年シカが増加したことで他の植物が減りクリンソウが増えたと推定されています。この地域ではすでに70年前にも数箇所でクリンソウの存在が記録されていますが、大群落になったのは近年になってからと考えられます。
また、このあたりは、鎌倉時代から室町時代の頃に栄えた丹波修験道場であり、かつては法螺貝の響きと錫杖の音がこだまする信仰の山でした。その修験道場に関した宿坊か庵跡と推定される平坦地が10箇所の段丘として残っており、近くには新金峰山大岳寺跡もあります。
5月から6月にかけて、多くの登山客がクリンソウの自生地を目指して登山に訪れます。
■瀬利御嶽道コース(クリンソウ自生地まで約1時間20分)
瀬利御嶽道登山口から尾根筋合流地点(火打岩からとの合流地点)までの700mは比較的緩やかな登り。途中、大日如来像を祀った祠が点在し、歴史を感じさせる。瀬利駐車場は約20台駐車可能。
■丸山コース(クリンソウ自生地まで約1時間10分)
丸山登山口から瀬利御嶽道との合流地点までの約400mはやや急勾配の登り。途中に見える主峰 御嶽の遠望は素晴らしい。丸山地区旧キャンプ場駐車場は約20台駐車可能。
■火打岩コース(クリンソウ自生地まで約1時間10分)
火打岩登山口から尾根筋合流地点(瀬利・丸山からとの合流地点)までの500mは急勾配の登りなのでマイペースで。登山道はよく整備されている。火打岩駐車場は約50台駐車可能。